物語性にも重きを置いた、いいアクション映画を観ました。登場人物の個々の想いに寄り添うような丁寧な演出が良かったです。期待もしてなかったのに、過去作品の似た場面が描かれたり、過去作品のアーカイブが差し挟まれたりに、少しずつほだされていった感じです。「親会社のワーナー・ブラザーズが4作目の製作を決めたから、僕らは作らざるを得ない」みたいな自己言及ギャグにはあきれつつ、いつの間にか物語世界に入り込んでいました。

　説明場面や説明台詞は多かったと思います。トリニティ（ティファニー）を救いにメンバーが「マトリックス」へ入り込む一連のシーンなど、眠気に襲われる箇所もありました。でも、彼女が突如、昔の記憶をがっつり取り戻し、「私の名前はトリニティ」と宣言して後ろ蹴りに警官を蹴散らす場面には、思わずうるうると来るものがありました。ネオとトリニティの関係性が重きをなした、本シリーズを観てきたからこその感動だと思います。本作の弱点かもしれませんね。

　結末は、1作目の原点に戻っただけの話です。「マトリックス」に繋がれたままの無数の人類をどうするか。精神の自由の素晴らしさを知らしめる、みたいなことを言ってました。もちろんそれが成就すれば、「マトリックス」は自ずと瓦解する。しかし、少なくともそれまでは「機械」との共存を選ばざるを得ない訳ですね。僕なんかが思い付き得るのは、人間の代わりに動物を繋いでおいても「機械」を動かす動力源を充分確保できるのではないか。複雑な「仮想現実」を見せておく必要もない訳だし（実際のところ人類は奴らに何かいい夢でも見せてやっているだろうか）。そんな意味で、僕は猫より犬の方が好きですから、僕が次に観たいのもやはり「猫リックス」（“CAT”RIX）ということになりましょうか。

80／100(21/12/25見)