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[コメント] 香川1区(2021/日)

日本の(どこでも??)選挙の難しさ。☆4.0点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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前作『なぜ君は総理大臣になれないのか』(2020/日)と同様に、小川淳也の人柄は判るが政策は判らない。前作はなかなか当選出来ない「<いい人>の選挙」を描いたのだと思った。本作は対立候補も取り上げる事で小川淳也と「小川淳也でない人」の違いを描き出したにも関わらず、政策(の違い)は良く判らなかった。前作では政策を表に出すと作品がプロパガンダ色を強くしてしまったり、観客を分断する事になるので避けたのだと思ったのだが、本作でも政策の違いを表に出せないとしたら、日本という国は何なのだろうかと思ってしまう。大島 新は自ら「選挙は政策では無い」と規定してしまうのだろうか。(そう問う意義はあると思うが…)

平井卓也の醜態が著しいが、小川の興奮する場面も並置している。選挙では立候補者は不安と疑心暗鬼でおかしくなるものだ、というのは良く解った。私は小川のいう「立候補前なら調整を図ろうと最後まで努力する事はおかしく無い」という意見は尤もだと思う。実際平井もやっていた。それがどうして小川は叩かれてしまうのか。立候補する権利は誰にでもあるのであり、不当な圧力だ、という反論も当然あり得る。両方まぁそう言うだろうな、という事なのだ。

現職大臣として余裕をかました映像と、選挙終盤に目が血走りなりふり構わず映画クルーを罵倒する映像は、これ以上ないとってつけた様な対比を為す。平井の凶暴さには「日本の歴史」を見せつけられている様で暗鬱とした気分になる。ペンクロフさんの言う通り、平井は選挙事務所で「あのクソ映画のせいで!」と憤慨しているのだ。それで選挙カーの取材では、クルーが酷い扱いをされても周囲の平井陣営スタッフは何もしない。もっと別の対応はあった筈だ。最後まで正々堂々と議論し、一部の支持者が取材陣に乱暴を働いたら止めに入り、落選したら粛々と敗戦の弁を述べればいいのだ。醜い。それは嗚呼、日本人の醜さだ。

平井陣営の死んだマナコとは対照的に、小川陣営の支持者達のキラキラした視線が描写される。オバマ大統領が誕生した時の民主党大会を思い出す。しかし、当然この視線にも注意は必要である。熱狂と反省、行動と批判、難しい。

涙が溢れ出したのは、当選後の長女さんの言葉。最初長女さんが出てこなかったので、離脱かな無理ないよ、と思っていたが、可能な範囲で今回も頑張っていた。お父さん・お母さん・奥さん・娘さん、あなた方に投票したいよ(香川1区じゃないけど)。日本の選挙って、政策じゃ無いのか。…

(2022.04 ポレポレ東中野にて鑑賞)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ペンクロフ[*]

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