[コメント] ちょっと思い出しただけ(2021/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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私は伊藤沙莉ファンで、「樹木希林になれる逸材」だと常々言ってきたんですが、まさか主役級の人気者に成長するとは思わなんだ。そんな沙莉(「さり」ではなく「さいり」ね)の『タイトル、拒絶』以来の主演作をちょっと観たかっただけなんです。
思うんですが、『花束みたいな恋をした』とか、『ボクたちはみんな大人になれなかった』とか、最近似た話が多い気がするんです。この両作品と本作の大きな違いは、押井守を持ち出してるかどうか(<そこじゃない)。大人になれなかった渋谷。花束みたいな明大前。ちょっと思い出した高円寺。どうやら俺のテリトリーで若者の恋愛が花開いているらしい。冷静に考えたら、この3本とも『いつも2人で』なんですよ。スタンリー・ドーネン、こんな映画も撮れたんだなあ。
タクシー運転手になった理由を問われた伊藤沙莉が答えます。
「お客さんに行き先を決めてもらえる」「どこかに行きたいけど、どこに行きたいか分からないから」
彼女は芝居をかじっていたという過去もあり、元々「自分探し」をしていたのでしょう。どこかに行きたい。でも、どこへ行ったらいいか分からない。そんな彼女は、自分の人生の「行き先」を彼氏に託したのです。でも、彼は「鳥貴族」にしか連れて行ってくれなかった・・・。
運転席の伊藤沙莉と助手席の池松壮亮が、話しているうちにだんだん険悪なムードになってくるワンカット長回しの演技に痺れたんですよ。ビックリするほど自然に、二人の仲が壊れていく。ドラマは夜に生まれ、「ああ、そんな夜もあったな」とちょっと思い出しながら、朝を迎える。そんな私小説的物語。悪くない。
余談
上述した『ちょっと思い出しただけ』 『ボクたちはみんな大人になれなかった』『花束みたいな恋をした』(みんなタイトル長えな)以外にも、同じ松居大悟の『くれなずめ』とか今泉力哉『あの頃。』とか(どっちも観てないけど)、最近ノスタルジーものが多くて気味が悪い。これ、どういう流行なんだろう?
(2022.02.20 アップリンク吉祥寺にて鑑賞)
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