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[コメント] 英雄の証明(2021/イラン=仏)

私だって他人には優しく、不正には厳しい人でありたいと思っている。なのに、何も決められず状況に右往左往し流されるこの男(アミール・ジャディディ)の悪気なき愚鈍さに苛立ってしまうのは、人は“こうあるべき”という幻想に私が絡めとられた凡人だからだ。
ぽんしゅう

一瞬にしてスイッチが切り替わるように状況が反転したとき、人に優しく接するのか、厳しく対処するのか、私の気持ちも呆気なく切り替わる。自分では制御できない心情の変節。冷静になってみると恐ろしいと思うが、そんな経験はいくらでもあったし、これからもあるのだろう。何のことはない私自身が“何も決められず状況に流される”この男なのだ。

吃音のために言葉で意思を伝えることが不得手な少年(サレー・カリマイ)の“目“が印象的だ。彼は、状況を懸命に凝視し、目の前で変節する大人たちを、見たままの事実だと受け止めて、懸命に何かを語ろうと目を見開き訴えかける。僕は見たんだ! と。でも、何を見たかを正確に語ることは誰にも(大人にだって)出来ないのだと思う。

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ペンクロフ[*]

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