[コメント] ある男(2021/日)
多くの情報の中から「その人」を印象付けるものは何なのだろう。「その人」を形作るものは何なのだろう。出自という情報(重荷)を知らなかったとしたら・・・。鏡、或いはガラスに映りこんだ自分とその奥に潜む正体の知れない自分。
平野啓一郎らしい社会への啓発に満ちた主題をまっすぐにとらえた大胆な編集(時間の流れやシーンの変換)も好感が持てた。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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走る悠人とトレーニングで走るある男。 刑務所の廊下を進む城戸と戻る城戸。 面会室で怒鳴る小見浦と子どもに怒鳴る城戸。
多くの対比がそれぞれの内面とオーバーラップし、緊張感を高める演出が冴えているし、例えば飛行機の音や鼓動など、音響効果も感情に訴える。
安定の安藤サクラの存在感、ヤな女がはまり過ぎの真木よう子、唐突感はあるもののある意味キーパーソンである清野菜名ら女優陣に導かれる展開もテンポよく、安藤サクラの息子役悠人も良かった。
出自や偏見によって苦しむ人がいる一方で、本人は意図せず何気ない言葉で傷つけている人もいる。その人を見て判断するということがバカらしくおこがましく思う反面、型にはめカテゴライズし差別することとなる。
合わせ鏡のように、人の内面には奥に、さらにその奥に、多くの後ろ姿があるのだというメッセージと受け止めた。
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