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[コメント] エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022/米)

手加減なしのバカ映画。バカレベルでは同じ監督コンビの『スイス・アーミーマン』に匹敵。そして「ご家族風味入りハードSF映画」としてはクリストファー・ノーランを遥かに凌ぐ良い出来。ただノーランと同様その家族愛ネタのせいでバカが濁っているのはやや残念。たいへん良いバカ映画なのは確かですが。レビューは大ネタバレあり。
月魚

**ネタバレ注意**
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「オープニングがその映画のすべてを物語る」と妻がいつもいってる通り、冒頭の「虹の彼方に」を彷彿させるピアノのメロディがこの映画を象徴してるとも思うのですが、そのあたりも含めて家族ネタの着地点がやや甘くいのが少々辛かったです。毒親再生産の輪廻から脱却するのであれば、やっぱり娘はあらゆる世界において旅立たせるべき(というか、そういうのが私の好み)だし、エヴリンの可能性を奪い続けた毒父が簡単に許されちゃうあたりが『ウルフウォーカー』とか『遠い空の向こうに』的でもんにょりするのですよ。みんなお家が好きなのね(そりゃThere is no place like homeですからね)。(宇宙冒険大活劇だったはずなのに、いつの間にかご家族再生ネタに堕してしまったあの映画を象徴するセリフをもじった)「I'm your mother」というセリフも含めて、まあそういう映画なんですよ。そこは『スイス・アーミーマン』のような乾いたバカ映画に泣かされて脳が混乱するという感じではなかったです。

とは言えそのご家族ネタの甘さに目をつむることができれば、バカ部分では観客がついてくるかどうかなんぞ気にせず混乱を混乱として放置したままストーリーが展開していき、ハードSF部分では「科学的発見で人類の存在意義がどんどん周縁部に追いやられていく」という(こっちは私の大好きな)真理が語られ(石、かわいい)、でもそんな世界が愛おしくなるような素敵な物語なので、そりゃまあアカデミーにノミネートされようってものですね(しかしいつの間に米国アカデミー会員にこんなバカ映画耐性がついたんだ?)。というわけで、これで作品賞でも獲ろうものなら「バカ映画史上初」となるので、それはそれで楽しみではあります。

(どうでもいいですが、あの月間表彰トロフィー、最初から形がそれっぽいなーとは思ってたんだ)

(評価:★4)

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