[コメント] エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
「オープニングがその映画のすべてを物語る」と妻がいつもいってる通り、冒頭の「虹の彼方に」を彷彿させるピアノのメロディがこの映画を象徴してるとも思うのですが、そのあたりも含めて家族ネタの着地点がやや甘くいのが少々辛かったです。毒親再生産の輪廻から脱却するのであれば、やっぱり娘はあらゆる世界において旅立たせるべき(というか、そういうのが私の好み)だし、エヴリンの可能性を奪い続けた毒父が簡単に許されちゃうあたりが『ウルフウォーカー』とか『遠い空の向こうに』的でもんにょりするのですよ。みんなお家が好きなのね(そりゃThere is no place like homeですからね)。(宇宙冒険大活劇だったはずなのに、いつの間にかご家族再生ネタに堕してしまったあの映画を象徴するセリフをもじった)「I'm your mother」というセリフも含めて、まあそういう映画なんですよ。そこは『スイス・アーミーマン』のような乾いたバカ映画に泣かされて脳が混乱するという感じではなかったです。
とは言えそのご家族ネタの甘さに目をつむることができれば、バカ部分では観客がついてくるかどうかなんぞ気にせず混乱を混乱として放置したままストーリーが展開していき、ハードSF部分では「科学的発見で人類の存在意義がどんどん周縁部に追いやられていく」という(こっちは私の大好きな)真理が語られ(石、かわいい)、でもそんな世界が愛おしくなるような素敵な物語なので、そりゃまあアカデミーにノミネートされようってものですね(しかしいつの間に米国アカデミー会員にこんなバカ映画耐性がついたんだ?)。というわけで、これで作品賞でも獲ろうものなら「バカ映画史上初」となるので、それはそれで楽しみではあります。
(どうでもいいですが、あの月間表彰トロフィー、最初から形がそれっぽいなーとは思ってたんだ)
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (5 人) | [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。