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[コメント] 最後まで行く(2023/日)

12月28日から元旦までの約5日間。日が変わると、画面いっぱいに日付が表示される。この図々しさ加減がいい。愛知県の埃原(あいはら)という架空の都市。出て来る車両のナンバープレートも埃原ナンバーで統一されている。ポスプロで修正しているのだろうか。
ゑぎ

 雨の中、走行する自動車のタイヤ。運転しながらスマホで会話する岡田准一を車の外側から、ぐるっと回って見せる。勿論、スタジオで停車した車を使って撮影されているのだろうが、高速で走っているように見える、上手い画面造型だ。次のシーケンスと云っていいだろう、雨の中の検問から始まる山中崇ら警官たちとのゴタゴタ場面も面白く、唐突な綾野剛の登場まで続く、この一連の畳み掛けは、とても良いオープニングだと思う。中でも、スマホの着信音の使い方がいい。ちなみに着信音のメロディは、ショスタコーヴィチ(セカンド・ワルツ)じゃなくてオクラホマミキサーだ。こんなところでも、本作は、よりコメディ志向が強く感じられる。本筋で云うと、死体を題材にしたブラックユーモアという部分がかなり強化されている。

 主人公は岡田准一で間違いないが、綾野剛とダブル主演と云って良いほど、綾野の場面も多いのだ。というか、大晦日のある場面で、いきなり28日に戻り、綾野の顛末になるプロット構成には驚かされた。このギアシフト感は気持ちがいい。本作の岡田はとてもなさけないダメ男として造型されていて、綾野のスマートかつ鋭利なキャラとの対比がよく効いている。

 アクション場面だと、車が爆発しながら横転して川(?)に沈むシーンの見せ方や、札束をバリケードにし、一万円札を撒き散らしながら銃撃及び格闘する場面なんかもいいけれど、墓石の上を転がり落ちる2人の画面は見事だと思った。こんなの見たことない、というアクションシーンじゃないか。

 あと、脇役も二人書いておきたい。一人は、終始険しい表情の広末涼子。喪服姿で睨みつける場面の顔演技が素敵。彼女がラスト近くで軟化するのはちょっと失望した。全編怒り顔でも良かったと思う。そして、本作でも柄本明が抜群のプレゼンスだ。もう邦画の(いやテレビドラマも含めて)悪役では、柄本明時代と云っても過言ではないぐらい、この人がやたら目立つようになったと思う。砂漠のトカゲの話の挿入も良いアイデアだと思うが、柄本の顔がトカゲみたいなのだ。エンドロールの途中でも変顔で登場させるというのは、やり過ぎだとは思うけれど。もっとも、本作中の変顔ということであれば、ラスト近くの綾野のメイクが一番インパクトがあったと思う。結局、最後まで行ったのは、岡田以上に綾野じゃないか。

(評価:★3)

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