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[コメント] 青春弑恋(2021/台湾)

今時の若者を描いた古風な映画。映画らしい映画。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







青春弑恋(しれん)と読むそうです。駄洒落かどうか分かりませんが、青春の「試練」を描いた映画です。英題「Terrorizers(テロライザーズ)」はエドワード・ヤン『恐怖分子』と同じ英題。『恐怖分子』へのオマージュあるいは本歌取りであることは間違いない。この映画も、エドワード・ヤン同様、写すものと写さないもの、台詞で言わせることと言わせないこと、観客に提示すべき情報と観客に推測させる情報を間違いなく「選択」している映画らしい映画でした。

劇中、手書きの手紙などを使いながら「(自分は)古風だ」ということを男女が話します。これは、監督自身による「古風な映画を撮りますよ」宣言なのです。VR、配信、コスプレなど今時のツールを扱う今時の若者でも「人の心は変わらない」という古風な映画なのです。ラストの駅のシーンなんかね、古い手法なんだけど、グッときたんだ。

ホー・ウィディンというこのマレーシア生まれの台湾映画監督は51歳だそうで(本作制作時は49歳)、決して「若者の代弁者」ではありません。トリュフォー27歳の『大人は判ってくれない』ではないのです。むしろこのアラフィフ監督は、この映画におけるマッサージ嬢のオバサン(お姉さん)や床屋を営む父親に近いポジションです。そしてこの大人たちは、事情が分かっていて無言のままであったり、「テレビは壊れている」と言って世の中の噂話をシャットアウトしたりしたりする。つまり、「優しい」大人たちなのです。

Z世代を描いた映画だという売りで、通り魔事件をモチーフにしていることから、大人から見たら『恐るべき子供たち』、若者から見たら『大人は判ってくれない』なのだと勝手に思っていました。しかし蓋を開けてみれば、「若者だって心は変わらない」「大人は優しい」という映画だったのです。

欲を言うなら、ちょっと世間が狭すぎるんだよな。あと、実はもっと血みどろなものを期待しちゃったんだよな(笑)。予告編が悪いんですよ。あと、ちょうどシネマート新宿が『食人族』<4Kリマスター無修正完全版>のポスターとか貼ってたのも悪い(笑)

(2023.03.26 シネマート新宿にて鑑賞)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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