[コメント] 怪物(2023/日)
こうなると、中村獅童や学校のクラスメートたちの目には物事がどのような見え方をしていたのか、そこまでも思いを馳せたくなる。それくらい心をざわつかせるものが、自分にはあった。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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異なる視点から描く三度びのリフレインを通じて、違和感のミッシングリンクが繋がっていく過程には、伏線回収の醍醐味を感じさせられ、満足度は高い。金管楽器の件りには特に唸らされる。
が、そうだとしてもやはり、安藤サクラ目線のパートでの学校サイドの態度はあまりに不自然。学校側からの視点では安藤がモンスターに見えてしまう、という演出が足りていないのだと思う。彼女自身の言動にもちょっと普通じゃないところを感じさせてはいたのだが。
各パートの最初に挟まれる夜景、周辺部にのみ灯りがあって中心はぽっかりと暗黒。初めは湾か何かかと思ったが諏訪湖だと分かる。そして、全ての登場人物にとって共通体験となる大火災が時間軸のリセットとして巧く活かされている。
少年たちが二人だけの世界を創っていく様の瑞々しさには見入ってしまう。このあたりを切なくも生き生きと描く手腕の確かさには『誰も知らない』『奇跡』などの過去作品を想起させられるし、豊かな緑の中の線路、鉄橋には『スタンド・バイ・ミー』を連想した。2人の交流に友情を超えた性愛を漂わせるあたりはイマドキだな、とも思ったが。
雨粒が叩きつけられる天窓の泥を拭う様を逆側から見上げたカットは実に独創的。
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