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[コメント] 劇場版 ごん GON, THE LITTLE FOX(2019/日)

夜の狐狩り。火縄銃。兵十が手前、奥に加助。奥はフォーカスが外れている。兵十、キツネを狙って撃ったように見せるが、わざと外す。優しくて殺せないのだ。引き気味の構図が全編効果を上げる。早いディゾルブ繋ぎ、これも要所でだが、全編で使われる。
ゑぎ

 通常、ディゾルブ繋ぎは抒情的になると私は感じているのだが、この映画のディゾルブ繋ぎは、スピード感の創出に寄与していると思う。

 兵十の母親は病身。川で兵十、母のために精のつくものを、という思いで、ウナギを獲る。ウナギの表現も上手い。キツネは、イタズラで魚籠の中からウナギを持っていく。首に巻いて。小さな橋の上から、ウナギを川へ捨てる。既に死んでいたのだろう、動かずに流れていくショット。

 彼岸花。お墓に隠れて、葬送を見るキツネ。兵十の母の死。この葬送の構図も実にいい。赤とんぼに嫌味を言われる。お前のせいだと。

 兵十の家のタタキ(土間)に、栗やアケビ、キノコを持って来て置くキツネ。そのうち、代わりに彼岸花が置いてあるようになる。加助から、それは神様だろうと云われる。

 彼岸花も終わりの季節。兵十は、栗などを置いてくのは、死んだお母さんだと思っている。もういいよ、俺も強くなるから、と云い、最後の彼岸花を、粗末な仏壇(位牌を置いた台)に供える。このシーンとキツネがやってくる場面とをクロスカッティングで見せる。

 窓の向こうにキツネの尻尾が見えてからの、家の天井から兵十を俯瞰で撮ったショットや、銃を取って、表に出て陰に隠れるショットなど、絶妙な光の表現に胸が締め付けられる。銃に弾丸を装填して火縄をおこす動作を丁寧に、しかし、ジャンプカットも使いながら見せる。キツネが、栗とアケビを置き、外に出た後、家の中から玄関側を撮ったショットも光の溢れる画面。長い間。ラストまで仰角俯瞰の使い分け、照明の繊細さ、端正な構図、どれを取っても一級品だと思う。少年の顔になった際のキツネの意匠、そのボサボサの毛の感じがまたいい。

(評価:★4)

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