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[コメント] 一晩中(1982/ベルギー=仏)

冒頭から矢継ぎ早に何組かのカップルが登場してくる。彼、彼女らの群像劇が始まるのだと思い各シチュエーションと人物たちの容姿の特長を記憶しながら次の展開に備える、がすぐに無駄だと気づく。シャンタル・アケルマンの関心は起承転結の物語になどない。
ぽんしゅう

1時間30分の映画(≒フィルムの連鎖)に存在するのは、ある夏の夜半から朝へ向かう時間の帯(流れ)のなかにピン止めされた"人の行為"の断片だ。強いて言えば「抱擁」「ダンス」「玄関ドア」「窓」が不連続に登場し印象に残る。それと初頭に出てくる電話を掛けて相手が出る前に切ってしまう女と、最終盤に登場する掛かってきた電話にひたすら「はい」とだけ答え続ける女の意味ありげな歪な対称性。

映画の構造は『家からの手紙』(1976)に似ている。ただ20代半ばのアケルマンの作品には「その先への予感」があったが、10年後の本作には過去から未来へという時の流れから寸断された「一瞬」の断片しか存在しない。もう本作に「その先への予感」はない。とはいえ厳しい"閉塞感"も存在しないのだが。

(評価:★3)

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