[コメント] アルセナール(1929/露)
導入の貧農描写が箆棒に素晴らしく、元祖アンゲロプロスではないのだろうか。もっぱらこの前半を観るべき映画。後半のソ連対ウクライナの戦争描写はなぜか平凡。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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動かない佇む人をそこここに配置して村を撮るアンゲロプロス調。俯く女たちの静止、片脚の男が横断する。息子は戦死。荒地に種まく女にキャメラは順々にアップで捉え、女は倒れる。片腕の男は痩せ馬を鞭打ち、女は幼子を殴るカットバック。「見当違いだ」と入る科白は馬の科白だろう。まるでトルストイのようだ。
戦場に白煙、「人間を陽気にするガスがあるそうだ」。笑う眼鏡の兵士。足元には笑った顔で死んでいる兵士。「敵はどこだ」と字幕。以下は史実に沿うのだろう、帰還兵に「ウクライナ民族共和国の名において武器を渡せ」とコサックが迫り、ブレーキの効かない貨物列車が逃走して、アップの顔の背後で風がなり、アコーディオンが毛虫のように落下する。
ここまでは異常に面白いが、比べて以下は地味になる。ウクライナは二色旗の反革命中央機関。主人公はウクライナ出身だが「俺は労働者だ」と敵対し、工場と土地とソビエト政権を要求する。なんか事務している敵方ウクライナの描写が延々あったりするが、陽気なコサックダンスのシーンもある。「道でブルジョアや将校に会ったら殺していいか」「いいぞ」みたいなノリで、最後はソ連側の主人公がさあ撃てと自分の上着を裂いて見せ、ウクライナは逃げるというラスト。冒頭に造兵廠と字幕が入るアルセナールは、銃弾が流れ作業で研磨される描写がある。
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