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[コメント] ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023/米)

シリーズ4作目は圧倒的な満足感を得られる傑作だ。冒頭の縄を巻いた板を打つ拳とその凄まじい音響効果。そこにローレンス・フィッシュバーンが朗々と語りながらやって来る大仰な演出を見た時点で、本作の気合というか覚悟が伝わってくる。
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 さらに、序盤のNYコンチネンタルの場面で、シリーズを見続けている観客には、かなり驚く展開が待っている。大阪での、真田広之とその娘−リナ・サワヤマも加わった、いつ果てるとも知れないアクションシーンや、ベルリンの巨大クラブにおけるモブ(ダンスする大量の若者たち)の中での銃撃戦などは、今シリーズではもうお馴染みの、でもヤッパリ実に面白い独創的な造型だと思う。しかし、何と云っても、パリを舞台としたアクションシーケンスの連打は驚異的ではないか。それは、凱旋門周辺での自動車を絡めた(人が自動車に、これでもか、というほどぶつかる)演出、続く建物の天井上からの視点(真俯瞰)の長回し移動で、撃たれると炎がはぜる銃火器による殺戮シーン、そして、222段という科白があったと思うが、長い階段落ちのアクションだ。これらのいずれもが、映画史に残る、という形容が大袈裟じゃないレベルだと思うのだが、ワタクシとしては、特に、真俯瞰シーケンスショットのスペクタキュラー、その昂奮度が断トツだと感じられた。これらのアクション造型の多くにおいて、コンピュータが活用された成果だと推量するが、このレベルの処理こそが、映画における幸福なCG活用と云えるとも思った。

 こういった俄かには信じがたい、ブレイクスルーと云ってもいいアクションの後に待っているのが、古式ゆかしい単発銃での決闘シーンなのだ。この対比も素晴らしい。これが、盲目の暗殺者−ドニー・イェンとの対決で、真田と比べたイェンの扱いの大きさがちょっと羨ましくも感じてしまうのだが、ウィンストン−イアン・マクシェーンも含めた、これら主要人物の描かれ方の十全さにも、大きな満足感を覚える出来なのだ。そういう意味で、若く、本人自身は全然強そうには見えないが、狡猾で嫌らしい悪役のビル・スカルスガルドも立派な存在感だったと思う。

 また、シリーズ通して「妻を愛する夫」という主題が一貫しているプロット構成には、ちょっと甘すぎる(お人好し過ぎる、感傷的過ぎる)という感覚も持つのだが、本作のエンディングで、ウィックがブギーマンでもババヤガでもなく、「愛する夫(Loving husband)」として成就するという描かれ方は、とても落ち着きが良く、これにも深い満足感がある。これまでのシリーズ作と異なり、本作では、妻のフラッシュバック挿入がずっとなく、終盤になってワンカットだけ挿入される、という措置も実に効果的だと思った(これも極めて私の好みです)。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ロープブレーク[*] トシ ひゅうちゃん[*] けにろん[*]

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