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[コメント] Ribbon(2021/日)

今時の、そして普遍的な青春物語。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







のんの登場シーン。全身リボンまみれのリボンのおばけみたいな姿で登場します。その後、部屋に帰ってもリボンに埋もれて「重い」とつぶやきます。それに対しラストは、足に絡んだ一本のリボンが宙に舞っていくシーンで終わります。この映画は、身体や心にまとわりついた「リボン」から解放される物語なのです。上手く言えないけど、リボンが暗示しているものを言葉にするなら「モヤモヤ」でしょうか。コロナ禍のモヤモヤであり青春のモヤモヤでもある。緊急事態の世の中と重なった思春期特有の「漠然とした不安感」。

正しい「青春映画」だし、正しい「再生物語」でもあります。コロナ禍という特殊な状況を普遍的な物語に昇華したと言ってもいい。さすまた持って歩いてる奴なんかいねーよ、とか、娘の描いた絵を断りもなく捨てる母親いねーよ、とか思うかもしれませんが、これは「親が恥ずかしい」「親が理解してくれない」のデフォルメです。正しい思春期描写。

とにかく脚本が若い。語弊があるな。若い人が書いた脚本。若い人にしか書けない脚本。妹との会話、スマホやアプリの扱い、とにかく「今時」。正直、感心しました。でも演出はどうかな?下手なテレビドラマ劇場版やネトフリオリジナル映画よりはるかにスクリーンでの鑑賞に堪え得る「映画」に仕上がっているのですが、今時感や目新しさは感じません。おそらく、取り巻きの大人が「映画人」たちなのでしょう。まあ「日本映画専門チャンネル」の看板背負って製作した作品だしね。簡単に言うと、いい映画だし、若々しい話なんだけど、演出は無難。

あと私、のんはいい女優だと思ってるんですよ。「青春のモヤモヤ」がよく似合う。見ていて飽きない。

この映画を、コロナ禍で奪われた創作の機会や発表の場(=青春)からの「再生物語」と読み解いた場合、干された期間を経て能年玲奈からのんへ再生した自身の物語と重なって見えるのは私だけでしょうか。

(2022.03.06 テアトル新宿にて鑑賞)

(評価:★3)

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