[コメント] 死者からの手紙(1986/露)
映画を見終った人むけのレビューです。
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地下にいて救われた僅かな人々の消息を中心に語られる。中央シェルターへ集まるよう勧告されているがそこは満員らしいという噂。妻は死に、博物館の同居人は自殺し(シェルターの地面掘って埋められるのが印象的)、主人公も最後は死ぬ。
物語は収束が弱いのが難だろう。クリスマスイブの一番星、「人々が前進さえしていれば希望はある」と主人公は云い残し、アインシュタインらのアピール「不和で滅亡するな」で映画は閉じられる。最後に高等数学ができるようになる主人公、彼の死後に喋れるようになる心身症の子供たちも、同作のラストの超能力少女が想起される。ストガルツキーはよく知らないのだが、この作者固有の登場人物だろうか。
息子に当てた手紙の朗読による進行で、原作者の警句の冴えが味わえる。「芸術は非人道的になっていた」という当時の心情描写はなるほどと思わされる。「子供の頃の恐怖を思い出した。汽車のレールのうえにいて、汽車を運転しているのも私。耐えられないのはお前(息子)が線路にいたこと」「人類の歴史は長い長い自殺の歴史。兵器のみが進歩した」
全篇モノクロで殆どがセピアカラー、数か所のみ青白と普通のモノクロになる。ガスマスク連発が衝撃的。タルコフスキーの弟子筋らしく、壁を舐める接写や水のイメージもある。壁が本の頁で埋められた水没した図書館がすごい。飛行機やドラックが追い、無蓋車が線路を走るショットは『ストーカー』が想起される。核爆発直後、息子を求めて彷徨う外界の回想はヒロシマの模写になるが、余り熱心ではなかった。
ベストショットは外界とのハッチの剥き出しになった無機質な施錠の仕掛け。足漕ぎランプはユーモアがかっている。遠くで水滴の落ちる音が響き、オルガンの和音が鳴り続ける。
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