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[コメント] 12日の殺人(2022/仏=ベルギー)

ミステリーというより人間ドラマ。たまたま職業が刑事だっただけ。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







このドミニク・モルという監督の『悪なき殺人』が面白かったので映画館に足を運んだのですが、本作は一転、奇をてらった事が一切ない作品でした。ストーリーは時系列通りに進行し、事件の発生以外はほぼ警察側の視点で描かれています。実に丁寧な映画で、私は遺体からスマホを取り出すシーンでグッときたんです。証拠品としてビニール袋に収めるリアルさ。細かい描写がリアルなのって重要。神は細部に宿る。

この映画の面白さはミステリーや謎解き的なことよりも、人間ドラマとしての面白さだと思うんです。

興味深いのは、ミステリーの人間ドラマって、犯人か被害者に焦点を当てるパターンが多いと思うんですが、本作は刑事たちの(特に主任の)ドラマなんです。なんなら、犯人はおろか、被害者すらどういう人間か、あまりわからない。

もう一つ興味深かったのは、この映画、常に「男と女」の話をしてるんです。被害者の女性。容疑者の男達。刑事同士の話ですら、結婚と離婚の話ですよ。最近はとかくLGBTQ映画が多い中、徹底して「男と女」。クロード・ルルーシュか!でもこれ、この映画の重要なテーマだと思うんです。

「殺された理由知りたい?女だから」

それで言うと、停滞した捜査を再び動かすのは、女性判事と女性刑事なんですよね。これ、興味深い。あと、この判事役のアヌーク・グランベールというベルギーの女優さん、61歳なんだそうですが、可愛くない?(<何の話だ)

主人公の主任刑事は自転車でトラックをグルグル回ります。これは、山に囲まれた田舎町で、先の見えない捜査をグルグルと続ける刑事達の姿に重なります。なので、主任刑事がトラックからロードに出るラストは、捜査の新たな展開を予感させる、ある種の「希望」なのでしょう。

(2024.03.20 新宿武蔵野館にて鑑賞)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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