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[コメント] 悪は存在しない(2023/日)

終盤まで極上の語り口に心酔していたのだが。まるでチョークスリーパーの達人に絞め落とされたかのような後味…
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







序盤から清らかな自然とともに暮らす高原の集落の在りようが美しく映し出されるが、どこか不穏な空気が流れ、人々にも腹に一物ありそうな違和感が醸し出されている。

住民説明会のシーンは、一見ベタな場面と思わせておいて、住民側の言葉を選んだ発言だとか、マユズミさんの誠実さを見せた対応だとか、緊張感の中に織り込まれるリアリティの質の高さに高揚してくる。

で、ずっと山のシーンが続いていたところが、東京(新宿かどこか)のカットに切り替わって、あらら視点が替わっちゃうんだと少し戸惑う。オンライン会議の描写でイマドキ感を醸成しつつ、社長が「今から行ってこい」とか言い出すあたりまで不安的中のベタさ。

ところが、「マユズミ、お前会社辞めれば?」で口火を切る車中での会話が想像を遥かに超越していて抜群に面白い。前作含め、この監督、車内でのダイアログを撮らせたら右に出る者はいないね。この車中シーンを契機に視点と観客の心情がタカハシとマユズミに乗り移る。

基本的に静かな映画なのに、まるでジェットコースターに乗っているかのような転調の連続で、映画に流れる空気の統一感に頓着しない無双ぶり。この語り口には唸ってしまった。

で、舞台は再び高原の集落に戻り、薪割り・うどん屋・水運びという滑らかな展開。

ラストに向けてどんな転調をさせるのかと、身構えるとともに期待に胸膨らませていたのだが…何でしょうか、思わせぶりで中途半端に意味ありげなだけのアレは。観客に解釈を委ねるスタイルは決して嫌いではないが、これはちょっと悪ノリでしょう。単に風呂敷畳めてないだけと感じた。残念。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] おーい粗茶[*]

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