[コメント] あんのこと(2023/日)
相当に時代性の強い作品。日本全体が新型コロナ感染症によって異常な事態に陥ったことを背景にしているとはいえ、終わりの方で河合優実が見た光景は、今の社会のあり様を鋭く告発しているように思えた。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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つらく不遇な人生を歩み、ようやくそこから抜け出せそうになった時に、さらなる不幸に見舞われた「弱者」にとって、最後に目にした、医療従事者を励ますためだとか何とか言われたブルーインパルスの曲芸飛行は何の意味も、力にもならなかった、と訴えているように思えたのだ。
この社会は、そんなことしかできないのだろうかと言われているような気がした。
そんな社会でいいのだろうか。ろくに学校に通うこともできず、社会のこともよくわからないまま生きていかざるえない少女に、「義務教育を放棄したのは自己責任」と言い放つ行政の窓口と、それを是認している社会とは、どういう社会なのか。
それは、絶望から這い上がり、自らの希望をつくり出して生きていこうとする人間を支えるのではなく、ただただ放置し、それがダメだったら、あっさり「残念だったねえ」と突き放してしまう社会なのだろうか。
われわれが生きているその社会の姿を、あたかもありのままに演じてみせた河合優実をはじめとした出演者、佐藤二朗、稲垣吾郎は深く記憶に残る。
またそういうものとして、隅々までリアルに演出した入江悠監督の、鋭い気概と熱量には、大きく心を揺さぶられた。
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