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[コメント] ヒットマン(2023/米)

はっきり云って、これはグレン・パウエルを愛でるための映画。もう一言付け加えるなら、相手役のアドリア・アルホナを加えたこの2人を楽しむ映画だ。勿論、この云い方は、あくまでも画面的な話だ。
ゑぎ

 プロットを要約すると、タイトルが表す通り、殺し屋についての映画であり、冒頭近く、殺し屋イメージを紹介する、というか、パウエルのモノローグシーンに挿入されるので彼の脳内イメージの再生みたいな位置づけになると思われるが、数々の殺し屋映画のモンタージュの最後に、宍戸錠が出てくる(『拳銃(コルト)は俺のパスポート』)。これは嬉しかった。

 他にも、猫派と犬派の映画、成りたい自分を見つける映画、なんて括り方もできるかも知れない。あるいは、別の見方をすれば、リンクレイターらしくと云ったらいいか、本作も非常にダイアローグの多い会話劇だ(ちょっと辟易させられる部分もあるぐらい)。

 しかし、これがまた非常にかっちりしたショット/リバースショット(切り返し)の繋ぎで造型されていて、見ていて気持ちがいいものなのだ。それは、序盤のパウエルが前任者−ジャスパー−オースティン・アメリオから引き継ぐ車中のシーンから感じ、続く最初の殺人依頼者との長い会話場面も切り返しで押す。そしてヒロインのマディソン−アドリア・アルホナの登場から続くカフェでのオシャレなやりとりの部分も切り返し演出としては顕著だろう。こゝの彼女の登場が、まるで幻想のようなフォーカスアウトしたショットというのもいい。

 中盤から終盤にかけての話の運び、2人の当初の契約が綻びはじめるプロット構成は、誰もが予想するパターンだろう。これにはちょっとありきたりに思っていたのだが、こゝに前任者ジャスパーを絡ませて見せるのが上手い作劇だ。クライマックスの3人の場面ではあっと驚く展開になる。このエンディングの図太さには快哉を上げる。映画の倫理観はこれで良いのだと私は思う。

 あと付け足し。この映画のジャンルはクライムコメディだ。ラストがかなりのブラックユーモアだと思うが、最もコメディらしい部分は、グレン・パウエルが殺人依頼者に応じて、服装や髪型やメイクを変える、キャラクターを変化させるところだろう。こゝまでする必要が分からない、という意味でも、この一連の見せ方は現実を超えているが(不自然なレベルだが)、これもコメディ映画として、倫理的な見せ方だと思う。

(評価:★3)

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