[コメント] 宝島(2018/仏)
全編の舞台となる「セルジー・ポントワーズ」というリゾート地は、前作『7月の物語』の一つの挿話の舞台でもあったが、前作では、ほんの一部分だけが写し撮られていたのだと分かる。本作では、このレジャー施設のほゞ全貌を見ることができたような気になるところも満足感がある。例えば、いわゆるプールみたいな、コースロープをはった場所もある。水上スキーのためのジャンプ台や、ピラミッドと呼ばれる階段状の構造物が湖の中にあったりする。また、湖および施設の回りを濠のように川が囲っている、ということも分かる。
さて、本作はドキュメンタリーというジャンルに分類されているけれど、私には、劇映画(フィクション)としか思えない。だからどう、というワケではないのだが、こういう分類の無意味さを突きつける映画だと思う。冒頭は、少年4人が、未成年者だけでは入場できないと追い返される場面だが、彼らは勝手に(不正に)、濠のような川から施設に侵入する。それをカメラは淡々と追いかけるが、少年たちは多分素人(職業俳優ではない)だろう。現場で出会った少年たちをカメラが記録しているというのも、多分そうなのだろう。しかし確実に、少年たちは、カメラの前で不正侵入者を演じているのだ。また、なんらかの演技の指示がされているはずなのだ。なぜなら、彼らは一人として、カメラに視線を向けないのだから。このように、少なくも各挿話の中心になる人物たちは、基本、カメラ目線がない(ゼロではないが)。例えば、ナンパする男の子たちの挿話が何度も出て来るが(従業員も、仕事が終わったら会おう、と客の女の子に声をかける)。彼ら彼女らが全然カメラを見ないなんて、きつく指示されている以外に考えられないのである。
また、入場客はまさに、人種のるつぼ、という感覚を持つ。黒人が沢山いるし、勿論、アジア系もいる。ラスト近くの黒人の幼い兄弟の挿話がいい。お兄ちゃんが、弟に色を教える様子を写し撮っている。様々な色が、こゝにはある、ということを象徴するようなエピソードであり、本作が、類まれな、極めて美しい色遣いの映画であることも、示しているかのような挿話だろう。「黒は?」と聞いた応えが省略されるのも、気が利いている。
#ロケ地のセルジー・ポントワーズは『秘密の森の、その向こう』でも出てくる。湖の真ん中にピラミッドのような人工的な島がある。
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