[コメント] わが町(1956/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
DVDジャケットの裏に「川島雄三版『無法松の一生』」と書いてあったので、観なきゃ!と思い借りてきました。結果から言って、また一つ、好きな映画が増えました。本当素晴らしい作品でした。
まず辰巳柳太郎という方の演技が印象的。当時おいくつだったのかは存じませんが、演技の振り幅の広い事。晩年になればなるほどその演技は魅力を増しました。特に喋り方が素晴らしい。本当におじいちゃんみたいでした。
この辰巳柳太郎さんが演じる他吉という人物は本当にはた迷惑な人。無法松どころの騒ぎじゃないほどはた迷惑。他人を自分のペースに巻き込むタイプで、これが夫や父親、祖父だったらと思うと本当にぞっとします。でも、やっぱりどうしても憎めないんですよね。多分、この他吉は誰よりも一生懸命生きているからなんだと思います。そして誰よりも人生を謳歌しようとしているからなんだと思います。何より自分の人生を真正面から全肯定している。なかなか出来る事じゃありません。そんな他吉を疎ましく思う気持ちも分かります。でもそれ以上に彼の生き方に憧れてやまないという気持ちにもなるのが周囲の人の共通した思いだったんじゃないでしょうか。だから嫌われ者になる事なく、他吉の周りにはいつも人がいたんだと思います。”そう簡単には出来ない生き方。”それが他吉の全てだったんだと思います。
また「人力車は他吉にとっては子供のおもちゃみたいなものだったんだな」という台詞が心に沁みる沁みる。そこから繋がるラストのなんとも素晴らしい事。物語が終わり、一人暗闇に取り残された時、本当に彼の、誰よりも自分自身に誇れる人生を思い返し、嗚咽まじりに泣きじゃくりました(翌朝、もちろん目が腫れていた)。
また素敵な映画に出会えた幸せ。
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08.06.13 記
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