[コメント] お嬢と番犬くん(2025/日)
例えば、冒頭、大きな門が開くと、若い衆の金剛−葵揚と瑠可−岩瀬洋志がいる画面。あるいは、中盤の縁側に福本がずっと座っている場面だとかも、良いシネスコ構図だと思う。こゝの福本と番犬くん−ジェシーとの絡みの演出もいい。
また、色遣いも綺麗。例えば福本の部屋のメロウな色使い(壁が薄い青、ターコイズブルーというのか)。高校内はやっぱり白いが(露光オーバー気味だが)、学園モノでよくあるような必要以上に白過ぎる画面ではないので、私は好感が持てる(例えば『殺さない彼と死なない彼女』は白過ぎると思った)。
あと、構図では仰角が多いことを指摘すべきだろう。私は仰角も好きなので、もう仰角祭りと思いながら(ワクワクしながら)見た。これは、ジェシーの身長の所為(身長に引きずられての構図の選択、あるいは福本との身長差の表現)とは思うが、福本とのツーショットだけでなく、切り返しの際の福本一人のショットも仰角が多い。2人の視線を表現するなら、ジェシーの仰角ショットに対して、福本をやゝ俯瞰で切り返すのが常套ではないか。こういったちょっと普通じゃない仰角連打が、全然不自然じゃなく、逆に面白かったのだ。
さて、少々気になった点もあげておくと、これは予想の範囲内だったが、まずは福本の心の声モノローグの頻出だ。私はもう全部不要じゃないかとさえ思う。少なくも8割がた不要だろう。なくても表情だけで伝わるし、伝えるべきだろう。役者で残念だったのは、田貫くん−櫻井海音だ。いや役者は全然悪くない。なのに、サイコパスとして中途半端な描き方が残念と思った。この人が、後半のアクション場面を牽引してくれるかと期待したのだ。全体、アクション演出がイマイチと云ってもいい。例えば、田貫−櫻井がジェシーに顔を掴まれるシーンも、もっと痛さを出さないと。他にもジェシーが敵をやっつける場面も、田貫が喧嘩の相手を殴り続ける場面も生ぬるい見せ方だ。脇で良いと思ったのは、福本の友人になり応援してくれる2人の同級生の描き方。特に背の高い安藤さんを演じる松井遥南という人。映画的な面構えで、これから化けるかもと思った。もう一人のシャーク香音さんは、可愛いが映画的な顔じゃないなと思ってしまいました。
そして主人公2人について。福本は綺麗なショットとそれ程でもないショットの落差のある人だというのは以前から持っていた印象で、残念ながら、これは今回も覆らなかったが、概ねうっとりしながら見た。対して、ジェシーはずっと綺麗と思いながら見た。2人の絡みはたまらんシーンばかりだが、屋上での「待て」と「よし」の前段に、「ロミオとジュリエット」での寸止め演出がある、というのが実に巧妙な作劇だ。屋上からクレーン(ドローン?)で上昇移動し、校庭の炎を見せるショットにも満足感がある。
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