[コメント] 日本侠客伝 雷門の血斗(1966/日)
お話は、元ヤクザの興行主同士の抗争劇。高倉健は、内田朝雄が代表の平松興行の後を継いだ二代目(役名は平松信太郎)。身内には、待田京介、藤山寛美、井上昭文らと、先代からも一目置かれていた侠客の島田正吾がいる。また客分扱いに近い旅の渡世人として、本作では長門裕之が登場する。敵対するのは、ほとんど現役のヤクザと云ってもいい観音一家で、水島道太郎がボス。二番手はこゝでも天津敏だ。
本作の藤純子は、島田正吾の娘の役で、最後まで健さんに絡む、純然たるヒロイン。女優では他に、ロミ山田が芸人一座の座長役で出演しており、待田と天津の間で取り合いになり、長門とは昔惚れ合った仲、というシリーズ初期作ならば南田洋子が演じたような、プロットを駆動する重要な役割だ。ほとんど映画出演のないロミ山田が、どうしてこの役に抜擢されたのか、という裏話が気になるところだが、ともかく、マキノのディレクションに応えて立派にこなしていると思う。また、もう一人、芸人役で重要なのが、人気浪曲師・梅芳を演じる村田英雄だ。健さんとは昔馴染みで、梅ちゃん、信ちゃん、と呼び合う仲。彼の浪曲が聞けるシーンは2度あるが、いずれも、聞き惚れてしまう。カメラワークも劇場の中をドリーかクレーンで寄っていく特別感のあるもので、画面の持つ力にも鳥肌 が立つ。
殴り込みシーンでは、クライマックスの前の島田正吾一人で水島を斬りに行くシーンが恐るべき迫力で、島田の身のこなしが機敏なのにも驚かされた。ラストの朝日座へは、高倉健と藤山寛美の二人で殴り込みをかける、という変則形だが関西人としては、藤山寛美の見せ場を作ってくれたのがとても嬉しい。違う見方をすると、やはり、長門裕之では鶴田浩二の代わりにはならないのだ、と感じさせられた。全体的に、興行が舞台なので、モブシーンの見せ場もあり、登場人物も脇スジもシンプルなので、その分、力強くまとまった作品だと思う。
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