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[コメント] ジュラシック・パーク(1993/米)

1993年,『ジュラシック・パーク』公開。映画がテクノロジーに無条件降伏した日。
もーちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







平伏した。脚本が,役者が,昔かたぎの特撮屋が。

お話は破綻なくよく練られている。漫画チックなラストも,あの横断幕でぐっと小粋になる。

超意訳するならあれには「本日の主役」と書いてあるようなものだ。

役者さんたちも,地味だが芸達者な方たちがこなれた演技を見せる。

でも僕らが驚いたのは本来映画の持つ魅力のコアな部分ではない。

技術の進歩により可能になったびっくりするほどリアルな画面作り。

CGで見事に再現されたそれは,未来のロボットでも戦闘機でもなく,太古の巨大爬虫類。血が通っているかのような文字通りの“皮膚感覚”。

本作初見当時の衝撃は,そこに乗っかっている。

本編でテクノロジー偏重の危険について語られる場面がある。

しかしこれは,娯楽としての映画そのものにも同じことが言えるのではないか。

本作以降,技術的にできないことは事実上なくなった。(「だから製作する」と公言する監督さんもいる)

それでどうなったか?

商業ベースに乗っかってる以上,映画も,内容も,大衆に支持されるものだけが生き残る。

しかし淘汰され生き残ったはずのハリウッド謹製娯楽映画の現状は,あまりに悲しくさびしい。

絵で魅せる,音響で魅せる,もはや役者もストーリーさえも添え物に過ぎない。本末転倒,「本日の主役」であるべきものの逆転。

マルコム博士の台詞を借りれば,実のところ「テクノロジーが映画をレイプした」のだ。

もちろん本作に罪はない。この手の作品に重厚な人間ドラマや火花散る演技合戦など期待していないし,求めている人もあるまい。

それでも,かつて自作映画化作品に寄せたアーサー・C・クラークの気持ちが,今はちょっとは分かる気もする。

(評価:★4)

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