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[コメント] 社葬(1989/日)

見処は中盤までの馬鹿サラリーマンもので大いに笑わせてくれる。痴呆なのに役員している小松方正が微妙な造形でやけに印象的。終盤は当たり前になっちゃって残念。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







終盤は緒形拳と御曹司の佐藤浩市の会社で戦う決意話になるのが平凡。社葬は転覆され会社は潰れちゃうぐらいのブラックジョークで放り出したら傑作だっただろうに。やはりヤマサツは偉大だったと思ってしまう。

拡販団がクルマでい田舎回りして押し売り、ひと月の契約で判子を12ヶ月分押して、ライバル社とクルマで押し合い。大卒が作って高卒が売るというのは聞くが、「日本の新聞はインテリが作ってヤクザが売る」と直して無理矢理にヤクザ映画にしている。販売管理部長緒形拳はタダで配る電気洗濯機500台を経理部飛ばして注文。

後半に、人事に臍曲げて緒形呼び出した北村和夫ら何十人も集まった厳つい販売店主たちは、新聞社とは会長との関係だ、会長の血筋が跡継ぐまで納金止めて販売もしないと叛乱起こす。緒形は啖呵切って切り抜けているが、そういう関係もあるのだと思わされた。

序盤、緒形は社長高松英雄らに呼ばれて宴席。ここがいい。会長派の派閥争い。芸者がフォークギター弾いているのが細かい笑わせ処。編集局長の江守徹は三味線でリパブリック賛歌を唄い、歌えないらしい緒形は腕立て伏せをして、寝込んで泊まり、女将の十朱幸代の毒蛾にかかる。

緒形は社葬の準備だと妻の吉田日出子騙して逢引きスキーツアー。後日、デートすっぽかされた十朱が、来なかった、と軽く口とんがらかす顔がとても上手い。彼女は会長の若山富三郎のオンナだった、涙を呑んで緒形のために若山を糾す、という終盤をどう評価するかが本作評価の分岐点のひとつだろう。私はやっぱりコメディを続けてほしかった。

株式公開されていない新聞社の権力闘争は役員会。専務の加藤武が会長解任の緊急動議。営業(会長派)と編集(社長派)の対立解消のためと。緒形は退席して決に加わらず動議は可決。拍手と無効だの罵声入り混じり、会長の若山富三郎は心臓発作で余命いくばくもなく社葬準備。すると社長も芸者の井森美幸と同衾中に腹上死するという展開。

社葬は社長にスライド。密葬で役員は葬儀委員会開いて喧嘩。江守の目線一発で子飼いの部下が走って配電盤操作して部屋を停電させるのが私的ベストショット。卑屈な部下ってのは嫌なもので身につまされる。社葬葬儀委員長にどうせ死ぬんだからいいだろうと若山の会長復帰を全会一致。斎場の控室でも会議している。役員とは会議の好きな人達だ。若山は持ち直し、報復人事で江守は緒形に辞表かかせようとして拒否。「ゴルフ場の親爺しろっていうのか」ってのは新聞社の多角経営なんだろう。

江守は交渉で社長の椅子を射止めていて、すでに刷りかけているメインバンクの不正融資報道差し替え事件を佐藤と緒形に尻尾掴まれている。編集局長が最終稿のチェックしない新聞社な訳で、新聞の正義を説く佐藤の弔辞と対照を示していた。融資担当部長なんだろう中丸忠雄は債券相場暴落の報を受けても買いを続けて自殺しちゃうのがバブルネタ。終盤は、突然に緒形へ告白する秘書の藤真利子が素晴らしかった。若山の改心の弔辞で終わるのも弱い。こういうので感動する人もいるのだろうが。

緒形は満州引揚、十朱に好き好んで残る奴はいないと語るのは当時の中国残留孤児問題への見解だっただろう。OPの新聞印刷の描写が興味津々だった。

(評価:★3)

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