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[コメント] ひめゆりの塔(1953/日)

戦没者全員を思いやる気持ちは判るが、もう少し焦点を絞り込んで描く勇気が欲しかった。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







余りにも多くの人物にスポットを当て過ぎて、収集が付かなくなったのか、かなり強引なラストで一まとめに括っているけど、これでは結果的に死者の霊を軽んずることになってしまう。(無論、あんな位置からの機関銃射撃はない!なんていう青臭いツッコミを入れたいわけではないです。)

また逢う日まで』のレビューにも書いたけれど、今井にはある種耽美主義者的な部分が垣間見られ、また社会活動家にありがちなナルシシズム、「受難フェチ」とでも云うか、も当然備わっており、彼のこういう本性と、主義者としての彼が打ち出すべき「社会性」がぶつかりあって、しかし今回は溶け合わずに、随分と欲張りで下品な出来になってしまった。

本作に現れた彼の本性とは、具体的には、死地に笑顔で向かっていく少女達の弾む肉体に見出したエロスと、行く当ての見えない「流ぼう」への倒錯的憧憬、燃え上がる炎に抱く昂奮、突然覆いかぶさる死への畏怖と安堵などで、これらこそが即ちこの映画の魅力の全てでもあった。少なくとも俺にとっては。

俺は思うのですが、この映画は最期の焚き火のシーンでつかのまの幸福のまま終わってしまっても良かったのではないか。彼女らの死は、同じ日本人ならば誰でも知っていること。死を描くことを放棄することでむしろその残酷さは倍増しただろうし、いかにもなプロバガンダ臭も少しは薄まっただろう。いやプロパガンダ結構、共産党映画大いに結構なのだが、政治的主張がドラマを侵食してしまっては本末転倒というもの。

*超ローキーな画面からは、セット撮影特有の胡散臭ささが排除されていて好ましかった。が、目は辛かった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)sawa:38[*] ぽんしゅう[*]

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