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[コメント] ニュー・シネマ・パラダイス(1988/仏=伊)

これが「映画を観る喜び」を描いた作品だからこそ映画愛好者に特別な感情を喚起することには改めて触れておきたい。村の唯一の娯楽に群がりマナー度外視で楽しみ尽くす観客たちの多幸感、映写された画面が広場に向かって壁を伝っていく高揚。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







123分の「インターナショナル劇場公開版」は何度も観ているのだが、173分の「完全オリジナル版」を初鑑賞。

両者は主題の置き方が異なり、ラストの試写室でのフィルムに涙するシーンの意味合いも全く違った印象になる、という評もよく理解できる。

前者では切ない初恋の思い出としてさらっと描かれた印象だったエレナとの件りが、後者ではやや強引に決着を着けられてしまった感がある。現代パートのエレナ役ブリジット・フォッセーが少女時代のエレナとちょっとイメージが繋がらないようにも思えた。やや奥ゆかしさを欠いてしまった分、このパートを削って「インターナショナル劇場公開版」としたのはやはり正解だったのかなというのが正直な感想。

一方で、アルフレードが、トトが故郷を出発つ背中を押したことの意味の重みがより深く表現されている点では「完全オリジナル版」が優っている。アルフレードは青年トトに言う。「村を出ろ。ここにいると自分が中心のように思える。人生はお前が観てきた映画とは違う。人生はもっと困難だ」「帰ってくるな。私たちを忘れろ」今どきの言葉で言えば、コンフォートゾーンを飛び出して自らの可能性を拡げることの大切さを説いている。中年になってから小学校の卒業試験を受験し、「子供の頃は戦争だった。大人になったらまた戦争だ」と語る彼だからこそ重みを感じさせる。

そして、アルフレードの父性と対になってトトを見守る母の深い愛。若き日の美しくも気丈な佇まいが、年老いてからの慎ましい慈しみと一貫した印象を残す。

(評価:★4)

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