自分が生まれる数十年も前の物に懐かしさを感じるのはなぜだろう？その一因として映画館の風景が頭に浮かんだ。村で唯一の娯楽の場所で人々が色々な会話をしながら上映開始を待ち、みんな一緒に興奮し、盛り上がる。そんな暖かい空間が今の世の中にあるだろうか？パラダイス座も最後には思い出と共に封印されることとなる。だが、この世の中にそんな思い出を作れる場所があるだろうか？

　この映画は決して映画への愛を注いでいるからというのではなく、戻れない過去の忘れられない思い出を描いたが故の名作だと思う。今の映画は製作費、CG、アカデミー賞最有力などの話題ばかりが先行し、アトラクションと化しているものもある。観る側も本当の映画のおもしろさを感じないようになってきている。

　今一度、物の在り方を考える必要がある気がする。人生、何かを考えて生きていかなければ思い出も残らない。