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[コメント] 切腹(1962/日)

有名な話ですが、この企画を橋本忍は最初黒澤明のところへ持っていったのが恐ろしく発展して『七人の侍』になったんだそうですね。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







橋本忍のシナリオは明らかに素晴らしく、シナリオとしての価値だけでも素晴らしいものがある。

しかしながら小林正樹監督のスゴイところはカメラや美術など、各パートの大御所とも言える巨匠を見事にあやつってこれだけの作品を築き上げたことだろう。

映画がそれぞれの職人意識によって作られていた古き良き時代の崇高な作品と言える。

もっとリバイバルなり再評価される機会があっていいはずだ!

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自宅で再度拝見しました。

当時のことを思うと胸がきしみますが、何しろこの映画が作られた年にわたくしは生まれているんです。同じ年に『椿三十郎』とか『私は二歳』とか『キューポラのある街』などが上映されていますね。

もちろん当時のことを生まれたばかりの私が覚えているわけもなく、時代考証は今を起点に考えるしかありません。

この映画の主題は、天下泰平の江戸幕府で見栄や外聞こだわる藩主のぶざまな姿を描こうとしています。

国家や会社がこのような発想に陥る事態を「危険社会」という本で読んでいますが、まさにリスクを回避できずに、表面をつくろって、自らの地位や立場を守ろうとする姿勢が浮き彫りになったすごい映画だと思いました。

先般、トヨタ自動車のリコール問題にしても、この映画の主題とする部分に適合するような気がします。

ようするに社会は階級の中で自らの高い立場をどうしても守るという意識が強くなりすぎて、真実を露見できない。

この映画の主人公(仲代達矢)の執念にも驚きますが、ここまで理屈を重ねて恨みを果たす姿勢もまたすごいですね。

長くてくどい映画といえますが、この映画の内実に踏み込むと、現代社会の危機を滲み写しているように感じました。

2010/02/28 自宅

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)おーい粗茶[*]

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