[コメント] 穴(1960/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ベッケル監督最終作。原案はジョゼ=ジョヴァンニの小説で、作家自身が関わっていた1947年の実際の脱獄が元となっている。ちなみに役者の一人ジャン=ケロディは本当の脱獄犯で本人役で出演していることも話題となった。
脱獄ものの映画はジャンルとしても数多くあるが、これほどリアリティに溢れ、更に緊張感に溢れた作品は類がないだろう。余計なドラマを挟むことなく、ひたすら脱獄に向けての努力が描かれる(なんと四分間もひたすら穴を掘るシーンまである)作品で、ここにあるドラマは、仲間内の疑心暗鬼のみに焦点が当てられている。
その分、穴を掘るシーンの演出は際だっており、少しずつ少しずつ掘り進めるシーンは緊張感溢れるもので、こちらも一体成功するのかどうか?と一緒になって画面に釘付けにされていく。画面見てるだけで、本当にこれが成功するのかどうか、かなり一生懸命見せられた。
一旦成功したら成功したで、しかし今度はガスパールが本当に裏切ったのかどうか、そちらが強調されることになるのだが、実はこれが全く分からない。当たり前かも知れないけど、ガスパールはひたすらそれを否定し、一旦はそれを信じかける。
そして事実、最後の逮捕劇に至るその瞬間にも実は本当にガスパールが裏切ったのかどうか、分からない。確かにその可能性は一番高いのだが、実際あんな脱獄の方法で、しかもあれだけ音を立てていたら、誰かに気付かれていた可能性だってある訳だし、署長はあくまで仲間内での不和を演出するためだけにガスパールを使っていたと言う可能性だってあるのだ。それを最後まで明かさないのが本作の一番面白い部分だったかも知れない。
これまでの作品が役者の魅力と過剰な演出が目立ったベッケル監督だったが、最後の作品で極めてソリッドな仕上げ方をしたことに最大の評価をしたい。
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