[コメント] 愛と哀しみのボレロ(1981/仏)
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『愛と哀しみのボレロ』なんて邦題をつけられてしまったことが、この作品の人気にプラスになったことには違いないだろうけれど、それはまた、ラストのジョルジュ・ドンのダンスにばかり注目を集めさせてしまうことにもなったかもしれない。
『Les uns et les autres』という原題をどう訳すのかは案外難しい。日本語では『自分と他人』とするのがとりあえず妥当だとは思うけれど、それでは抜け落ちてしまうことも多い気がして落ち着かない。むしろ『人々』とした方が近いようなところだって、あるかもしれない。まあ、クロード・ルルーシュ監督が、この作品で、若くしてモノにしてしまった『男と女』というモンスター作品にきっちり落とし前を付けた(と思う)ことを端的に示唆するには、『自分と他人』としておく方がいいだろう。
ああ、何度も出て来る色眼鏡の謎のアコーディオン弾きはフランシス・レイか。あれ?このセコンド、ジョルジュ・ブラッサンスじゃないの!・・・みたいな「発見」がそこかしこに散りばめられていることだけが、この映画を何度観ても厭きないことの理由ではない。大まかに言えば、ロバート・キャパの写真などで脳裏に焼き付いていた第二次大戦前後の世相が色彩を得て躍動する前半に引き込まれ、経済発展の裏で深まる孤独に蝕まれる(1980年当時の)現代を描く後半が身にしみるのだけれど、たとえば、ラストのコンサートが終わって会場から観客が出て行くシーンで、40年間探し求めた息子と一緒にいるアンヌの表情にかすかな柔らかさが戻っているような一瞬のディテールに深く貫かれるからだ。
しかし、冒頭、タチアナを1位にしないボリショイのオーディションは絶対におかしい!ベジャールのプリマを落とすなんてw
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