[コメント] 愛と死をみつめて(1964/日)
美しいだけの女優なら、スターと呼ばれるだけの女優なら、それこそ星の数ほどいるだろう。昭和の伝説を確かめる為には充分過ぎる118分間。
ただ美しいだけではなく、あの清廉さとあの明るさ。そして見る者を包み込んでしまうような慈悲深い微笑み。「気高い」という言葉が似合う女性である。
『ローマの休日』のオードリー・ヘップバーンと吉永小百合の二人にしか与えられない称号でもある。
本作品の彼女は顔の半分を包帯で覆った状態での出演。それでもその薫りたつ気高さが伝わってきた。女優の命である「顔」を半分隠した状態で「美しさ」を表現出来るのは彼女ぐらいしかいなかったのかも知れない。
だが、私はこの作品に彼女が出演したのは、彼女の「女優」としての意地だったのではないだろうかと推測する。「可愛い・美しい」ともてはやされていた絶頂期の女優が、顔を隠して「芝居」の力で2時間の作品を作れるのか?
邦画界への挑戦は見事に成功した。喜びと絶望という相反する演技を「顔半分」で表現してみせたのだ。しかも、それでも美しかったのだ。
当時の男はこぞって「サユリスト」に名乗りを上げたという。悔しい、そんな「祭り」に乗り遅れた自分が悔しい。今の私に出来るのは、そんな「昭和の伝説」をそっと確かめることぐらいだ。
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