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[コメント] グランド・ホテル(1932/米)

本作は後に日本では宝塚でも芝居となり、宝塚らしからぬ退廃的なステージが話題を呼んだとのこと。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ベルリンのホテルでタイピストとして働いていたというヴィッキ=バウム作の同名の小説をバウム自ら劇化したものを映画化。1932年全米興業成績2位。

 基本的に相互に関係のない数多くの登場人物が一所に集まり、限られた時間の中でそれぞれのエピソードを交錯させながら人間模様を描く映画形式は「グランド・ホテル形式」と呼ばれるが、その名称の由来となったのが本作。この形式だとホテルだけじゃなく客船とか汽車とかを舞台として数々の作品が作られており、ファンも多い。近年では日本でも、まさにこの作品のオマージュをたっぷり込めた『THE 有頂天ホテル』(2005)がヒットしたのも記憶に新しい(特別室の部屋の名前にそれぞれ本作のキャラの名前が書かれていたりする)。

 しかし、流石にその大元と言うだけ合って、その基本は全てしっかり抑えられている。一部に繋がりはあるものの、基本的に他人が集まるため、その登場人物の動きや繋がり方をしっかりと捉え、更に過不足無くキャラを見せる。特に登場するのが大スターばかりだけあって、作り手の気遣いが見え隠れ。作り手の方もかなり慎重に作られてるのが分かる。

 本作は基本的にビアリー演じるプレイジングとガルボ演じるグルシンスカヤの二つの物語が主軸となるが、そこに互いにこの二つの主軸に関わる人物達が違う物語へと関わっていくのが面白い。主軸となるだけあって二人の演技は申し分なし。ただ、面白いのはそこに男爵役のバリモアが絡む事。彼はトリックスター的役割で、時に道化のように、時に物語の根幹に関わり、二つの物語を仲介する役割を上手くこなしている。最後に死んでしまうのは「おや?」とも思うのだが、面白い事に彼の関わった人物はみんなそれぞれ幸せば朝を迎えているという所だろう。まさにこの人物こそがトリックスターなんだな。

 ガルボはこの歳まだ27歳だったそうだ。とてもそうは思えないほど退廃的な老け役ぶりが見事にはまっていた。

(評価:★4)

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