コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 終電車(1981/仏)

すっかり騙された快感に浸れる傑作
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







振り返れば、地下に匿われた旦那のハインツ・ベネントが登場する辺りからはすでに劇中劇であり、全てはラストの舞台落ちで判明する舞台上の出来事だった(すると旦那は、実際は南米に逃げていて帰還し、この作品を物したことになる)。

劇中劇とそのなかで演じられる舞台は、どちらも舞台なのだから区別がないことになる。終盤のドヌーブとドパルデューの唐突にみえる急接近は、舞台で恋愛していたのだから決して唐突ではないし、一方、妻が旦那を裏切った訳ではなく、全ては旦那の作品上の出来事だったのだ。

最後に確認されるのはふたりの睦まじさ、そして主演男優を間に挟んだ、三人の演劇(映画)に対する愛なのだ(ここは肝心なカットで、カーテンコールに応える三人の真ん中にいるのはドパルデューであり、「両手に花」のドヌーブではない。テーマは三角関係ではなかったのが明らかにされている)。

ドヌーブの心変わりにモヤモヤしていたものが一瞬にして晴らされる快感。『スティング』以来の鮮やかなひっくり返しである。お見事と云う外ない。『思春期』みたいな子役は愉しく、後テーマのワルツはとてもいい曲。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。