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[コメント] グラン・ブルー(1988/仏)

「映画の舞台で行ってみたい場所は?」という質問があったら、迷わずこの海を選ぶ。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







それはもはや理屈を越えた、強烈なノスタルジーに近い感覚。「海に帰る」というのは、こういう感覚をいうのだろうかと、ふと思ったり。そのことだけでも、(もはや他人の評価云々に関係なく)この映画は自分にとっての宝物デス。

エンゾのでかいカラダに宿る少年っぽさ、ジョアンナの恋するひたむきな瞳。ジャックは個人的には(モデルがいるとはいえ)人間として見ていなかった。多分前世がイルカだった男の話なのでは、なんて想像しながら。彼をそこまで魅了した海への思いは、多分海に帰ろうとする前世の記憶。しかし彼がジョアンナを愛したことで、徐々に人間に近づいていく。そして突然訪れるエンゾの死。海に沈んでいく姿を見て、前世の記憶が再び呼び覚まされたのでは、なんて。

海でしか生きられない男と、陸でしか生きることのできない女なんて、まるで禁じられた愛のおとぎ話(笑)。ジョアンナの生活にジャックを引き寄せてしまったら、彼の瞳は途端に光をなくし、彼女の知っているジャックではなくなってしまう。多分ジョアンナがジャックを引き止めきれなかったのは、そんな運命をその時初めて悟ったのでは、と。でもそれだからこそ考える。相容れることのできない二人から生まれた命の行く末に、今でも時々思いを馳せてみたりする。

余談: reviewを書き直すにあたって、久しぶりに物語を反芻してみたのだが、コレって数年前に大ヒットした’某映画’にちょっと近いような。ただコチラは、タラップを一旦は降りて陸の生活をしてみたものの、アイデンティティを確立できずに元の世界へ帰っていった話。・・・なんて穿ち過ぎでしょうかね(笑)。

(評価:★5)

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