[コメント] 果しなき欲望(1958/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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十年経って軍の隠匿物資発掘。モルヒネ6千万円相当。軍病院は払い下げられて肉屋の真下。傍の空き家を菅井一郎に借りたら失業者の息子長門裕之を雇わされる。
物件借りるにあたって殿山泰司は「引き揚げですねん」と同情を誘い、菅井は信用ならんと疑ってかかっている。後半に刑事の芦田伸介が来て家財道具がない云い訳にも「引き揚げですねん」大変ですなと刑事が返している。この借家、二階への昇降に梯子を使っている。時代劇なら雷蔵の『弁天小僧』がこれだったが、現代劇で見るのは初めて。こんなのがあったとは。
この払い下げの商店街、菅井の商売で転用すべく更地にされ、その期日と発掘が競争になる。簡易な商店街のセットが組まれて叩き壊されていて、この壊し具合、ご近所の引越しなど面白い。昔の映画らしく豪勢なものだが、当時の安い住環境らしく安普請のセットで予算は安上がりだったのだろう。いかな大雨でも、条例で出て行けという期日を過ぎても中原早苗の家族が晩飯喰っているのは太い庶民で好感。
首謀者の中尉は死んで妹の渡辺美佐子のアクマのような眉毛と吊り目と簪。長門誘惑して見せる内腿の傷がエロい。日活らしいいい夜の雨が叩きつけるなか掘り出し物両手に浴衣で逃げ回り、最後は殺した四人の男に地下へ引き摺りこまれる。絶妙な造形の高品格との絡みもいい。
冒頭、姫野という駅の周辺もいい。円いロータリーがあって中央盛り上げた独特の植込みがあって、外延に町の案内板や食堂やタクシー会社や交番や電話ボックスがある。当時の駅前のパターン化された造作なのだろう。とても懐かしい光景だった。穴掘った土捨てに行く河原に下水用らしき土管が各種並んでいる。長門が腹ばいになって弁当喰らっている(ものぐさの典型のようなポーズだった)ロケット形状のものもこの仲間だろうか。
小沢一郎が見たこともないようなハードな役で、調子が違うなと思っていたら諍いの絶えなかった加藤武を殺してしまう。そのとき玄関にお遍路さんが突然登場して錫鳴らすのがブラックでいい。初見。
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