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[コメント] ボーイ・ミーツ・ガール(1983/仏)

完璧な題。時代を問わず映画はボーイ・ミーツ・ガールを語ってきたわけだが、これほどボーイがガールにミーツするだけで「映画」は事足りると証明した作品は少ない。唐突なアクションの導入(友人の投げ飛ばし、ミレーユ・ペリエのダンス等)や冴えた室内撮影(コピー機室、キッチン等)など、画面の充実も周到に図られている。
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さて、肝心の「ボーイ・ミーツ・ガール」だが、ここでカラックスは「切り返しの禁欲」あるいは「ワンフレームの欲望」とでも呼ぶべきものによってそれを表象している。ドゥニ・ラヴァンとペリエが決定的に出逢うのはパーティ会場のキッチンにおいてだが、彼らはフレームによって分断されることなく、常に同一フレーム内に収まっている。それがカラックスにとっての「ミーツ」ということなのだろう。ふたりが並んで座っているカットはもちろん、どちらか一方に焦点が合わせられる場合であっても、もう一方は後景に退きながらもやはり同じフレーム内に留まっている。むろんカラックスはそもそもほとんど切り返しを用いない演出家なのだが、このキッチンシーンにおけるワンフレームに対する固執は若さの窮屈と切迫をとりわけよく切り取っている。

 それと、ラヴァンが二十三歳という設定もいいですね。もちろん若い。若いけれども、それは十代半ばのように若いことを理由に何もかもが許されるほどは若くない年齢で、それにもかかわらずえらく青臭いことに興じているという、そのダメさ加減。だからこの映画の「痛さ」は「若者の痛さ」というよりも「若さから半歩足を踏み出た者の痛さ」のような気がします。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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