[コメント] コップランド(1997/米)
生涯に一度の勇気で善を行う決心をするも、惚れた女は保身に走り、信じた友も手を汚していた。しかしやるのだ。
スタローン演じる保安官は愚直で善良だが流される男。仕事や生活が気まずくなるよりは、スピード違反を見逃す方を選ぶ。ビデオゲームではなくピンボールを、CDではなくレコードを愛する時代おくれ。目立たぬように、はしゃがぬように。肴は炙ったイカでいい。若き日に水没した車から助けた女性に惚れたのに、彼女が警官の女房になるのを指をくわえて見ていた男だ。女を警官にとられても片耳の聴力をなくしても、恨み言ひとつ吐かない。『コップランド』は今まで行動しなかった男が、スピード違反とは比べものにならぬ本当の悪を見過ごせずに立ち上がる物語だ。
内務調査の犬デ・ニーロに協力を要請されるも、保身と警察コミュニティへの義理立てから一度断るところなんか実に『ロッキー』に似ている。ロッキーもアポロとやれと言われて反射的に「いやだ」と言ってたからな。それでも、やる。ロッキーと違うのは、これは見返りゼロで、女も手に入らないし、人望も失うだけ。損しかしないのだ。でもやるのだ。ヤル! その決心に至るまでが地味に地味に描かれる。結果、ドンパチは最後に少しだけ。1997年の映画なのに70年代の刑事ドラマみたいで、すこぶる渋い。いいぞ。
デ・ニーロがバイト気分なのは明白で、ハーヴェイ・カイテルが敵なのにモヒカン刈りにもなりゃしない。劇場で観た当時は「なんだよバイトかよこのヤロー死ねよ」と思ったものだが、今思えばあれでもスタローンのために身を引いてくれていたのだろう。
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