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[コメント] ストライキ(1925/露)

作品としても、作中の時代としても『戦艦ポチョムキン』のちょっと前にあたる作品。こっちの方がむしろ私には好み。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 私にとってはこれが監督作品の中では一番最近になって観た作品なのだが、実は一番古い、今更になってこれが監督の長編デビュー作であったと言う事が分かった。

 確かに戦艦や大型砲と言ったド派手な演出はないし、名前を持たない主人公達は決して格好良いものじゃない。だけど、こっちの方がはるかに積極性に溢れているし、資本家との対比の描写も優れていたように感じる。

 貧困と低賃金に喘ぐ労働者達を克明に撮っているのだが、克明に撮ると言う事は、逆にそういった人間達の持つユーモアのセンス、したたかさと言うものも垣間見える。彼らは社会党の指導の元、一丸となって革命を推進したのではない。と言う当たり前の事実を見せたのは監督の卓見だろう。

 理想と大義名分を掲げる一部の人間と、パンが欲しいだけの大多数の人間達。ロシア革命はこのような雑多なパワーによって推し進められたと言う事が感じられる。やがて理想は排他へ、満たされる事は無気力へと転換していくわけだが…

 モンタージュ合成もかなり良い線いってたと思うし、密偵の動きがなかなかユーモラスで(彼らはコード・ネームで呼ばれるが、それが読み上げられる毎に元となった動物が登場するのが微笑ましい)、例の樽に住んでる住民がわらわらと現れるシーンは何か微笑ましい。

 劇中にユーモアはあるけど、ラストは見事なほどの悲劇で、オチさえもない。後味の悪い事おびただしいが、考えを転換してみよう。ここで登場する闘士たちは名前を持たぬ。あくまで民衆の代表としてでしかない。それを煙たがる資本家達は一人を検挙すればそれで事足りるとしてしまう。しかし後から後から闘士たちは現れる。そこに救いを見出そうとしているんじゃないか?そしてそのパワーが『戦艦ポチョムキン』に結実していく。本作と『ポチョムキン』は対になる作品なんじゃないか?

 ソ連型社会主義には嫌な思い出があるし、ちょっと退屈に感じた部分があるので敢えてこの点数にさせてもらったけど、★5でも良かったかな?

(評価:★4)

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