[コメント] 汚れた血(1986/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
(注:思ったままに書き流してます。レビューにはなってません。でもここでは私の本音をストレートに書きたい。)
(注:新しい感想をどんどん書き足したりしてます。下に行くほど新しい感想。)
カラックス監督の最高傑作です。非常に気合い入れて撮られております。 気合い入れて・・・ていうかちょっと暴走気味なのかもしれません。 自分の分身であるところの主人公アレックスに高度なトランプ技を仕込んでみたり、リボルバー持たせて警官を撃ってみたり、 BGMに「モダン・ラヴ」とかいう大いに評価の分かれそうな曲をかけて走らせてみたり、妙に文学的な台詞喋らせてみたり・・・。 ストーリーのみならず撮影においても、どこから引っかき集めたんだかわからないような小技が使われてたり・・・(ガラス反射とか、原色配置とか) アンチ・カラックスな方から見れば片っ端からサバかれてしまいそうなネタばかりですね。
しかしそれは、たとえ一つ一つは本質的には間違った使われ方をしてるのかもしれませんが、それは 「どうしてもこういうのが撮りたかったんだ!」っていうカラックス監督の意気込みであるわけであって、 もう、ただ、それだけが見どころなんです。
ほんとにそれだけですよ。そこが見どころ。 でもほら、ここまでストレートに自己表現できる監督って、不思議なくらい少ないじゃないですか?もっとたくさんいてもいいはずなのに? だからいいんですこの映画は。
あと、私事であれなんですけど、たとえ私がどんなに人を好きになったとしても、このビノシュ以上には美しく撮れないんだろうなとは思いました。 影の使い方。ビノシュの動作。カメラ構図。どれもこれも計算され尽くされてます。(もちろんカラックスなりの計算なんでしょうが。) やっぱこの人すごいのかも。 あ、でも、彼のキャッチである”恐るべき子供-ゴダールの再来”ってほどにはすごくないと思う。たぶん。
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あと、この映画撮ってた時のカラックスって実年齢こそ26歳ではありますが、ほら、彼ってひどく内向きな人ですから、何かといろいろ忙しかったとは思うんですよね。色々と難しいことをたくさん考えなくちゃならなかったんだろうし。
んで、そんなもんだからものっすごい母性愛に飢えてたと思うんですよ。 だからわざわざ実年齢が22歳だったビノシュを、あえて自分より年上の三十路手前って設定にしたんだろうなぁって思うのです。
あぁ、でも、今まではカラックスの眼光にノされてきたけど、改めてよく見てみるとビノシュってそんなに美人ではないような気がしてきた今日この頃。いやあやしげにかわいいことはかわいいんだけど、でも女神ではなさげだよ〜。女神じゃないよ〜。はうぁぁ・・・。
うん。でもそれにしても、何回見ても何回見ても、なにかしら発見のある映画っす。ホントすごいっす。
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細かな芸もスゴイですよねえ。
たとえば序盤で、アメリカ女がやって来たのに気づいたマルクがひげ剃りのスイッチを切るシーンがありますけど、そんな1カットですらすんごい構図じゃないスか。 ひげ剃りの位置、車の位置・距離、ドアガラス・・・がきっちり画面に収まってる。
いえその、その構図自体がどんな意味を持ってるかなんてのは私にゃわかりゃせんのですけど、ただそういう細か〜いところにまでヤバいくらい神経が行き渡ってるのが嬉しいのです。 「あぁ、ホントに一生懸命作ったんだなぁ・・・」って思うじゃないスか?
それですよそれ。だからアンチな人も「引っ掻き集めてこねくり回してる・・・」とか言っちゃいけませぬ。「全力でやれるだけやりたくってる」って言ってあげてください。男が(別に女でもいいけど)何かを思って精一杯プライド賭けてやったのです。そして何やら気合いの入ったものが出来たのです。誰がバカにできようか。いやできまい。うん。
きっと彼はいい人なんですよホント。もし彼が理系だったら私といい友人になれたかも。でもどー見ても思考回路が文系だなー。”定義”とか”基本ツール”とかは彼のアタマには無さそうだもんなー。
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