[コメント] ガタカ(1997/米)
無機質なのは、世界観だけが理由ではないと思う。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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例えばヒューマン・ドラマとして見ると、「愛憎」という面で物足りない。持つ者と持たざる者というのは、互いに反発し合いながらも、どこか憧れを寄せたりするものだと思うのだが、その二つの感情の間から生まれる熱量みたいなものが、この映画の中にはほとんど皆無に近いように思える。屈折した愛情を寄せるジェロームにしろ、終始兄を下とみなす弟にしろ、主人公に対してもっと強い反発や感情の爆発があってもよいと思うのだが。受精の段階である程度は操作されていても、性格の欠点は操作されてないという設定であるなら、なおさらそこに人間味がないとちょっとウソ臭い。
近未来の遺伝子がモノをいう世界観。面白い着想だとは思うが、現実味や深みはあまりない。というのも「適正」「不適正」という二分化で済ませられるほど、DNAの構造は単純ではないと思う。あらかじめ決められた運命に抵抗するオトコの物語に集中するために、あえてシンプルな設定にしたのだとは思うけど。
ラストも不満。不適正者に夢を託すために、ジェロームが命を捨てるなんて美談にもならない。ジェロームだっていくら優秀なDNAを持っていようが、身体の障害ゆえにあの社会の中では不適正者にならざるを得ない人間なのだから、彼にも頑張ってもらいたいワケで。最後の最後で、テーマが中途半端になってしまったような気がする。
結局個人的には、まさに髪一本落ちてなさそうな清潔な映像と、配役の妙を味わう映画でした。
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