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[コメント] 血を吸うカメラ(1960/英)

う〜ん・・・。スプラッタかと思いきやそれ以上にディープでマッドな映画だった。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







原題「Peeping Tom」は日本でいったら「出歯亀」に該当するのではないだろうか。

かなり語れそうな映画だと最初思っていたが、語れるようでなかなか語れない。色々とキーワードが続出していた。映像、見る、恐怖、盲人などなど。まあ「視覚」が重要な要素ではある。

映画には登場しないが彼の父親は、平たく言えば「マッドサイエンティスト」だ。そりゃあんな異常な育てられ方すれば主人公はやばい人間になるよ。彼は父親から受けた仕打ちを同様に、否、増幅させて他人にも差し向ける。彼の被写体となった人間と、主人公自身(父親の被写体)とは「恐怖」という枠組みで括られる。被写体=受動である。逆に撮影者は極めて嗜虐的である。現実に恐怖を与え、その後も他人の「恐怖」を所有し、欲望を充足できる。カメラを中心に、対極的に両者は位置している。

《見る》という行為は攻撃的であり、一方的であり自己中心的でもある。性を示唆する場面は見当たらないが、撮影すること自体彼にとって性交である。だから女性ばかりが彼の好餌となっていたのだ。

では何故主人公が自殺し自己完結したのだろうか?当然、彼の精神異常が原因だろうが、それだけではなく父親の力も影響していたのではないかと想像した。つまりラストで、自殺は彼の意思ではなく、父親の「亡霊」がそうさせたのかもしれない。他人を密かに撮影していたつもりの主人公は、反対に未だに撮影を受けていたのだ。

(評価:★4)

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