[コメント] 明日に向って撃て!(1969/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
●セピアカラーの記憶をたどれば
カタカタと映写機のなるファースト・シーン。明滅する光。横なぐりのセピアカラーのスクリーン。記録映画?本編が始まり、正面のスクリーンが、未だ、茶色のセピアカラーで。銀行でのやりとりのあと、乗馬。逃走。男二人の馬の足元が、土埃にまみれて。進行して行くと、はるか遠方に青い山が映り(ここで始めてカラーになる)、朝焼けの光が男と馬を照らしだし、一瞬また、セピアカラーに戻ったかのような錯覚をさせる。緻密な構成。
●ニュー・黄金の三角関係
男二人に女一人の逃避行。『冒険者たち』(1967年)にも似ているが。男二人に比してキャサリン・ロスの影が薄い。監督が意図してのこころみであろう。 キャンディス・バーゲンでは、自我が強すぎるし。フェイ・ダナウェイだと、綺麗だが、女夜叉みたいで鮮烈すぎるし。『卒業』出演によりアメリカン・ニューシネマ風味を併せ持つキャサリン・ロスが丁度いい。最後は男二人の ドラマに収束していく心憎いキャスティング。ニューマン、レッドフォード、ジョージ・ロイ・ヒルの男の友情三角形の見事な構築。
●早くも成熟したアメリカン・ニューシネマの誕生
夕焼け色に染まったセピアカラーの川に浮かぶ自転車。車輪が回転している。回転音は聞こえない。映画は、アメリカでの最後の思い出。セピアカラーの写真に戻って。そして、ラストシーン。両手に銃を携えて飛び出す男二人。どうせ、やられるなら前のめりで行ってやれ!これは『俺たちに明日はない』(1967年)のラストシーンへの返り歌。飛び立つ方が後味が良い。
そんな朧(おぼろげ)な風景の中で、明確に華やかな印象を残すあの名場面。雨に濡れても。ゆっくりと優雅に周回する自転車。キャサリン・ロスの白い脚に魅入らせられながら。男二人にとって清楚な彼女は、青い山のように胸にせまってくるすがすがしいものだった。やっぱりキャサリン・ロスで正解。
●余談
あまりにも、カッコいいので、家に、白黒のラストシーンの写真を飾っております!まさにジョージ・ロイ・ヒル監督の思う壺(つぼ)やね(笑)!&監督のご冥福をお祈りいたします。モダンな作風のお方でした!
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