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[コメント] ガス人間第一号(1960/日)

水野は自分だけが持つその力を、たとえ世界を敵にまわそうとも愛する女のためだけに使った。もう1人の本郷猛の物語、悲しき裏「仮面ライダー」。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







水野はガス人間になる前に、大きな挫折を経験している。図書館の司書で糊口をしのぎながら「こんなはずではなかった」という思いを抱えて生きてきたのだろう。その思いが仇となり、彼はガス人間にされてしまう。

苦境に立つ藤千代を愛してしまった彼には、ああするしかなかったのだろうか? 思い出されるのは仮面ライダーこと改造人間・本郷猛である。手に入れた並外れた能力で世のため人のため、人知れず闘うヒーロー。そんな生き方を選ぶ人間もいるのだ。しかし、水野が本郷猛になれないのもわかる。彼は改造「前」の人生ですでに屈折していた。すでに世界は彼の敵だったのだ。そして、彼はあまりにも1人の女を愛しすぎてしまった。本郷猛にならなかったからといって、誰が水野を責められるだろう? これは悲劇としか言いようがない。

水野にも藤千代にも、他に選択肢などなかったのだ。それでも多くの人を殺めた水野は、その報いを受けねばならぬ。我々はその悲劇の結末に立ちあい、彼らの最期をこの目で見た。オレたちに出来ることは何もない。ただ紅蓮の炎の前に立ち尽くすのみである。無常!

(評価:★4)

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