[コメント] ひかりごけ(1992/日)
舞台を単に映像化しただけか、残念。ストレートに語りかける青臭い舞台演劇調が前半の熱演を蝕んでいくようだ。
日本映画界の悪癖。どうしても舞台>映画>テレビというのがあるらしい。
特に「新劇」は特定の政党と結びつき、政治的なテーマを舞台上から声高に訴えかけてきた経緯がある。私の卒論担当教授も左派演劇人として、著書や講演でなにやら訳のわからない事を叫んでいたようだった。そんな事はどうでもよい。
演劇を全否定するつもりは毛頭ないが、私は映画作品に優位性を感じている。いろいろなアングルやカメラワークで現実では味わえない世界を見せてくれるし、時には本物と見まごうばかりの「恐竜」まで見せてくれた。
この作品は重厚な題材を扱い、それなりの大作になり得るはずだった。このような重いテーマをどうやって決着させるのか、脚本・監督の腕の見せ所だろう。
しかし、本作ではラストで最も安直な手法を選んだ。リアルな映像が途端にバーチャルな夢(?)の世界に飛躍し、主人公は観客にストレートに語りかけてきた。まるで舞台劇の役者が懇切丁寧にテーマを諭すようにだ。本来ならば絶妙のストーリー展開の中で、あるいは役者の芝居によって、観客はテーマを個々に理解していくべきじゃないか?
それらをすべて省略して安直にテーマを語りかける手法は、映画を軽んじた演劇人による発想と言えなくはないだろうか?
テーマ良し、出演者良し。だからもったいないんだ。本当に残念だ。
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