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[コメント] 裏窓(1954/米)

「作家はペンこそが武器だ」と言う。だとすれば、カメラマンの武器はカメラをおいて他はない。いろんな意味で。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ヒッチコックの映画は実験的撮影法が取られるのが常だが(『サイコ』の音との融合性、『ロープ』でのとんでもないカメラワークなどなど)、この映画はその一つの究極の形と言っても良い。

 それは物語が一室だけで終わること?それは半分当たり。この映画の凄いのは、カメラが一室から全く出ないと言う点にこそある。最後にジェフが裏窓から落ちるシーンまでもが部屋の中から撮られている。ここまでやれば立派。と言うより、こういうこだわりがあるからこそ、ヒッチコックは大好き!

 それを可能とさせたのは、主人公に“動けない”という究極のハンディキャップを持たせたことにあるだろう。体を動かせない分、演技の幅が極めて限られるのだが、顔の表情だけでちゃんとクリアーしているステュワートの演技力は凄いし、リッターの芸達者ぶり、ケリーの美しさ。バーの不気味さ、見事に画面にはまっていた。

 その中でよくこんな撮り方が出来る!と感心する程の絶妙のカメラ・ワーク。これだけカメラを動かしにくい映画も無かろうが、その中でここまで魅せたのは偉い。特に隣のアパートに視線を合わせる時のズーム・アップ画面の微妙な配置や、最後のジェフ落下シーンは今でも思い出せる。

 物語も勿論ヒッチコックだけあって中だるみはなく、小出しのサスペンスが重ねられている。特に後半で疑っている相手(名前を主人公が知らないと言う点が不気味さを強調しているのは言うまでもない)がファインダー越しにこちらを見つめた時の緊張感。ラストで彼が部屋に入った時の逆光気味にこちらに迫ってくる男の不気味さよ!サスペンスの名手の名は伊達じゃない。

 主人公が勝手に他人の生活を盗み見、かってに物語を作り上げてしまうと言うのは、ちょっと倫理的にはなんだが、その推測を聞いてても飽きないし、その分、本当か嘘か?と言う期待感を持たしてもくれる。

 間違いなく、なみいるヒッチコック作品の中でも最高の完成度を持つ作品である。

 む〜、このコメント、ネタばれを受けねば良いけどな。それなりに迷彩を効かせたつもりだけど…

(評価:★5)

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