[コメント] サイコ(1960/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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切なそうな顔での「ホテル代はいつも私が払ってるのよ。」という台詞にまずはノックアウト。その時点でもう、彼女の閉塞感たっぷりな恋の行方に必要以上に肩入れ。
続く職場シーンでの、同僚による「なにげなくなノロケ」にムカムカ。ヤらしいジジイ客の娘の結婚自慢話と、(そう若くはない独身女性にのみ向けられる)あからさまな誘惑に、怒りは最高潮に達する。
ゆえに、横領して逃げだした時点では拍手喝采。彼女が殺されに旅立つのだとは知っていても、それでも「そうだ、そんな世間には唾を吐くべきだ!」などと興奮してしまう。
そう、初見ではなかったので、もちろんその先の話は知っていた。映像テクの凄さもオチも、きっかり覚えているとおりであれ十分に楽しめた。
が、最初のこの心理描写の煽りについては忘れていた。だからこそ、彼女に魔が差した理由がよくわかるその精緻な脚本に、あらためて脱帽した。前半がめっぽうおもしろい理由は、その挙動不審な演技やスリル感たっぷりな演出だけではなく、この<行動心理の基礎はバッチリ!>にあるのではないかとさえ思った。
単に初見時とは違い、私自身が<いわゆる適齢期の圧力>のようなものを体験した後だったからだけかもしれないけど。
追記: ところでペンクロフさんのおっしゃる説(これは精神病が引き起こした事件を綴ったのではなく、亡きお母さんが溺愛する息子にマジでのりうつったオカルト現象映画なのだ!)がこの映画の真実であるとすると、その直前の医師による事件解明演説がみんな間違いとなって実に愉快ですね。シャレコウベの謎が解けたうえに反権威主義的な極上のブラックユーモアともなり、最高だと思いました。
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