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[コメント] 地球防衛軍(1957/日)

同時期のパイラ人も好きだけど、こっちは光線光線のオンパレードで魅せてくれる。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ……第一作目の『ゴジラ』が『怪獣王ゴジラ』として凱旋公開されたのが1957年だったそうだが、なんとその時はシネマスコープサイズ。つまり上下をカットしてワイドサイズに引き伸ばしたものが上映されていたそうである。コレを見て「これからはワイドスクリーンの時代だ!」と思ったのかどうかは不明だが、本作は東宝スコープによる初の特撮映画となった。右にマーカライトファープ、左にミステリアンドームを配したカットでの光線の応酬、というカットは、当然ワイド画面を意識したものだろう。

 さて本作の特撮の見せ場といえば、やはりその作画合成による光線のダイナミックさに尽きる。もちろん昭和32年だということを感じさせない空想メカのオンパレードにも目を見張るものがあるが、個人的に特筆すべきだと思っているのはやはり光線エフェクトだ思う。侵略者ミステリアンの要塞から放たれる稲妻のような流れる光線、それに対抗するための防衛軍のマーカライトファープから放たれる網目のような光線がワイドスクリーンで炸裂する。これだけ迫力のある作画合成を描ききるとは、まさに東宝特撮恐るべし、である。こうまで見せつけて、海外の映画ファンが反応しないわけがなかったのだろう。実際海外で発売されているSF映画雑誌に「マーカライト」なる名前のものがある。由来は本作のメカからだが、それだけインパクトがあったということか。

 無論見せ場はそれだけではない。前半のモゲラ対自衛隊もなかなかのもの。小銃はもちろん、機関銃や火炎放射器は全て本物。空砲をバリバリ撃ち、モゲラに火炎を浴びさせるところを観ていると、自衛隊の妙な勢いのよさを感じる(ポンポン砲は実在しませんが)。とはいえ当時としては派手にやりすぎたのか、この後数年間東宝は自衛隊に撮影協力を得られなくなってしまったそうである。今なら広報活動がてら戦車も使わせてもらえるが、空砲や火炎放射をしたのはそうそう多くは無いはずである。

 話の広がり方は『空の大怪獣ラドン』とほぼ同じ(メガヌロンがモゲラ、ミステリアンがラドン)で、ミステリアンが戦争の悲劇を背負った者達、というのは『ゴジラ』であろう。故郷が滅んだからこの星に居させてくれ、と言う宇宙人だが、地球人は彼等の叫ぶ「平和」に同調することも、そして同情することが出来ない。彼等がしていることは地球人からしてみれば「侵略」にしか見えないわけだが、ミステリアンからしてみれば「貴方達は他から移住してくる人間を“侵略者”としてしか観られないのか」と思っているのかもしれない。

 だが地球に同調せず、自分達の国を自分達だけで建造してしまうことは、立派な「侵略」ではないのか?ミステリアンは不器用である。種が滅亡することに対する危機感からなのか、一気に力技でやろうとしたのがまずかったのだ。力技に対抗できるのは結局力技になってしまう。その結果がこれだ。第一ミステリアンの故郷は力技の衝突で滅んだにも関わらず、彼等はそこから何も学ばなかったのである。無論技術力は進んでいても、それに物をいわせて何でも力技でやればいいというような、まるで考えが無い国というのは地球にも存在するから人のことは言えないわけだが。

 最終的に、地球防衛軍の総攻撃と彼等の本心を知った白石博士(平田昭彦)によって、ミステリアンの基地は跡形も無く破壊される。逃げようとする宇宙人、銃を向ける白石、だがそこから光線が放たれることはなかった。地球人が、彼らに同情し得た瞬間である。だがもう遅かった。ミステリアンは「侵略者」という罪だけを被って地球から去っていった。そして彼等は「永遠の放浪者」としてしか生きていく道がないのである。それが、自らの身を自らで滅ぼした者たちが、永遠に背負わなければならない罪なのだ……。ここまで突っ込んで考えるとメッセージ性は非常に深いのだが全体をパッと見ただけでは、本編にそこまでの力を感じないのが残念といえば残念か。

 まあそれでも、光線のオンパレードを観るだけでも価値はある。「特撮だけ観たい!」という方がいたら、ビデオ「ゴジラファンタジー」をオススメする。壮大なオーケストレーションで聴く「地球防衛軍マーチ」と映画シーンとのシンクロに燃えること間違いなしである。観るべし!

(評価:★3)

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