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[コメント] 首都消失(1987/日)

天災もなく、金融不安もなく、心底「何とかなるでしょう」という気分にどっぷり漬かっていた時代に作られたのだなあ、ということだけがしみじみ感じられる。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







政治も経済もマスコミも、主だった機能を東京に集中させている日本の首都事情への警鐘こそ、本作のテーマであるのだから、「雲」を倒すなんていうことよりも、せっかくのその「雲」によって引き起こされた状況をいろんな角度で描写していかなきゃ勿体無い。それがパニックものとしての見せ場になり、そのままテーマにもなったはず。雲なんていうのは、そういう変わった状況を作るお膳立てに過ぎないのに、その実体など何だってよい「雲」を倒すだけの話を中心に据えている時点でおかしい。作り手は「首都への一極集中」という状況に何にも感じていないんじゃないか?と思えてくる。

政府広報のPR映画のような無害っぽいテーマ曲といい、もっこり山に物見遊山でもいくような大滝秀治の終始ヘラヘラした態度といい、緊迫感をくじくような無意味な演出もわけがわからない。何を楽しませようとしてこれを作ろうとしているのかわからない。「雲」側から攻撃をしてこないという設定が生み出す、対岸の側の無関心さ、一種異様なのどかさのようなテーマも内包しているのに、前提としてのパニックが描けていないため、何の表現にもなっていないのがむごい。

どんなにつまらなくとも、出来そこないでも「これを俺はやりたいんじゃ」という作り手の思いがあれば、そういうものは伝わってくるものだ。それすら感じないのは悲しい。

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)煽尼采

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