[コメント] あつもの(1999/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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「あつもの」とは「厚物」のことで、全ての花弁が頂上に向かって丸く咲く菊の種類のことらしい。この映画は、あつものに魅せられた主人公(緒形拳)を中心にして話が進む。
全国各地で定期的に開かれるコンクール。老人たちが自分たちの育てた菊を持ち寄りその美しさを競う。この映画で一番力強く感じたのは、このコンクールに集う老人たちの存在感だ。コンクールあるところ、老人たちの群れ、群れ、群れ。この雑草のような生命力(失敬)はいったいなんなんだろう。小島聖の年寄りたちを惑わす存在感は、この映画においてさして重要ではない。彼女もまた、あつものをめぐる物語の一人の登場人物にしかすぎない。「あつもの=輪廻転生」という背景が磁場の中心点のように、他の存在を引き付けている。あつものに魅せられた者たち。興味がない人から見れば全く意味を持たないあつものを育て続けるというこの執念。育てている本人たちにとっては生きがいなのかもしれない。けれど、側でその行為を観る者は、意味のないもののために何故にそこまで一生懸命になれるのかということが不思議でしょうがない。その理解不可能なものの存在が逆に圧倒的な強度を持った存在として立ち現れる。時には嫌悪を感じることもあるだろう。けれども、老人たちは育て続ける。彼らが死を迎える日まで。
無意味なこと(失敬!!)に生きるということの強さ、生命力。若者たちの目には、この老人たちが果てしなく強い者たちとして映るのではないだろうか。
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